帝塚山中学校・高等学校前校長池辺 政人

今日、コンピュータのない生活は考えられません。ありとあらゆるところに、人工知能が入っています。人間の等身大の感覚が薄れ、錯覚の中に毎日が動いているようにも思えます。しかし、私たちは自然の一部であり、「知、情、意志、躯幹の力」は間違いなく我々にとって大切なものです。中学、高校の6年間に「勉強、クラブ、学校行事」を通して、この4つの力を身につけ、総合的にバランスの良い人間を育てる。これは、今後社会のIT化にあわせて、効率の良いそして分かりやすい授業のためのITの取り組みがなされていく中で、正しく子どもを育てる道しるべとして見失うことなく、持っておきたいところです。

私は、やらされるのではなく、「自ら考えて行動する」そんな生徒であってほしいと思います。そのための主体性を身につけさせるために、授業やクラブ、学校行事の中に生徒が主人公になる場面を多く持ちたいと思います。人間力といった太い幹や根を育てるには体験が必要です。情報として知っていることと、身体で覚えることでは雲泥の差があります。仲間とともに、一つのことに打ち込むことで、生徒一人一人に関心を持ち、それぞれの個性を大切にすることになります。また今後の多様性に応じるには、科学の急速な発展の加速に合わせて常に動きながら考える発想と、しなやかに対応する柔軟性が「今この瞬間」に求められています。

過去にとらわれず、また未来に怯えず、「今この瞬間」を大切にする。スピード感が求められる時代だからこそ、実感できる教育をしっかりとしていきたいと思います。